道の駅北川はゆま

パシフィック・リム

映画

映画界に君臨するキングオブオタクの中の一人、ギレルモ・デル・トロがありったけのロボ&カイジュウへの愛情をハリウッド映画にパイルダーオンして作り上げたロボットVSカイジュウのバトル映画、パシフィックリィィームッ!!

■あらすじ

太平洋の海底に異次元の扉が開き、そこから怪獣がポツポツとおでまししてくる。さぁ、大変だ、ということで全世界は国家予算を費やして下した決断は「でっかいロボットを作って、あのカイジュウの顔にパンチをお見舞いしてやる!!」ということだった。

もっと単純にあらすじを説明しようとすれば三単語で完了だ。

Robot beat Kaiju!!

■見どころ

実はこの『パシフィックリム』の原案はギレルモ監督ではなく、脚本家のトラヴィス・ビーチャムが原案だ。霧深い朝、彼が海辺を歩いていると桟橋の影の形がまるで“海から何かが起き上がってくる姿”に見えて、そこから発想を膨らましたのが元だ。

そこにKing of Nardことギレルモ監督の趣味、偏愛、こだわりを余すところなくぶち込んだ結果こうなった。見てわかる通り、日本の怪獣がでてくるアニメや特撮にかなりの影響を受けている。今作のロボット(通称:イェーガー)は二人以上でないと操縦できず、しかもそれにはお互いの意識と記憶を共有しなければならない。もう『エヴァンゲリオン』を想起せずにはいられないし、そもそも巨大な怪獣と闘うのに戦車や戦闘機などの兵器ではなく、巨大ロボットって発想がもうメイドインジャパンです。あと、ストップモーションアニメで数々のモンスターを造形し、映画に怪獣の命を宿したレイ・ハリーハウゼンへの愛とオマージュを捧げていますな。あと、海から異形のものがやってくるのもギレルモ監督が大好きなクトゥルフ神話からの引用でしょうな。

まぁ、とにかく自分が好きなものと、そこから生み出された創造物を愛情たっぷり注入した映画ってことです。

ちゃんとイェーガーが闘うときにファイティングポーズをとったり、「えぇ!?それ武器にするの??」というものを使ってカイジュウの顔面にぶちかましたり、そして最終決戦前にはリーダーのアガる熱演説。とにかく、君が子供心を失っていないのなら、そのハートにロケットパンチを放ってくれるシーンがてんこ盛りだぞ!正直、もっと主人公以外のイェーガーやカイジュウのデスマッチがもっともっと見たい!!でも短い時間なのにちゃんと印象に残っているロボットの造形をしているあたりも、ハリウッド…やりおると感心します。日本が作り上げた功績に近づこう、受け継ごう、超えよう!としている感じがとてもいい。それがデザインにも出ていると、私は思うよ。

■最後のひと言

さて、この映画にはギレルモ監督の持ち味のダークな雰囲気や人間の心理に深くえぐるようなシーンは少ない。カイジュウの造形に残ってはいるが、やはりこれまでの彼の作品からすると異質だ。彼の数多くの趣味の中からある部分だけを絞りにしぼったおかげで、これまでの大人向けのファンタジーではなく、子供にこそ見てほしいスペクタクルロボット映画に作り上げた。

また、彼のインタビューによるとイェーガーが二人以上じゃないと操縦できない、という設定にした理由の一つに「どんな困難が立ちはだかろうとも、人と人が、性別、人種、宗教などを超えて協力すれば、必ず打ち勝つことができるんだ」という超熱いメッセージを子供たちに伝えたかった、と答えている。

確かにイェーガーに搭乗して闘う者たちの間には女性も含まれているし、たいていは肉親や兄弟、夫婦なのに、性別や肌の色を超えて操縦する機体が登場する。

大人になっても子供心を大事に大事にしていた人たちが、子供たち、そしてかつて子供だった人たちの心にパンチをして震える感動を与えてくれる。

それが日本発、ハリウッド経由のエンターテイメントロボット映画『パシフィックリム』だ。